「はかない恋」


恋が羽根となるなら
空に舞い上がって あの月に届くだろうか

恋が種となるなら
誰にも届かない場所で 咲くだろうか

想いが届かないことをはかないと呼ぶのなら
呼んだ名前が届かないことが もう恋のよう

何気ない風が 寂しさを連れていく
何でもない時が 空いた手をなぞるように

波のようにたゆたう心を
あの時散った花弁が 受け止めるように


通り過ぎていった後で その手の温かさに気づきました
冷たいと思っていたのは 本当はずっと待っていたからでした
何度も会いながら いつか別れる日を思いました

出会いと別れは 想いとは関係がなくて いつか離れることは 知っていたから
さようならを 言わないままで 時は過ぎていく

言えないのではなくて 言いませんでした

切なさは時々ずるい もう一度 会えるように せめてもの おまじない



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