何かたいそうなことを言おうとは思わないし、思えない。人生は睡眠欲と性欲に支配されている。いちもつが起き上がるときに俺も活発になり、そいつがしおれると同時に世間を窓の外に追いやって眠りにつく。性欲(と食欲)には金が要る。金が無いときは空っぽな胃袋と頭をベッドに放り出す。ひたすら眠っちまう。金が底をついたら、もう起きることも無い。それだけだ。生活だ。まずは生活だ。


 大阪探索。今月から大阪住まい。飲み屋の開拓は財布の事情であまり進まず。暇だから図書館でも行こうかと、部屋を出てフラフラ歩き出す。図書館について自然科学コーナーへ。最近気になる量子力学・情報・科学のメタ理論に関する本を手にとって窓際のテーブル席へ。読み始めて背後のトイレコーナーの雑音が気になる。ジジイがバタバタと戸を閉める音。カーッペッッの不快な人造音。俺もジジイになれば、こんな感じで自分の世界しか気にならなくなるんだろうか。まあ、そんなことはどうでもいい。腹減った。そういや朝から何も食ってない。起きたのは昼だけど。どーせ理解できないものより実際胃に入るメシだ。本棚より冷蔵庫だ。なんか違うか?図書館に行くまでの通りを思い出す。俺が図書館に向かって歩いていた歩道の反対側に朱色のほろに白地で中華そばと書いてある店を思い出す。気になっていた。並んでたし。今は15時少し前。今なら空いてんだろう。ラーメン欲が勃起のように俺の真ん中で盛り上がる。行くしかねーべ。行くしかねーだろ。ほんなん行くに決まっとーやろ。大阪弁は、、わからん。とりあえず行こ。

メシダ!メシダ!

店の前まで行くと、もう並ぶ人はいない。チャンス。俺の前を歩いている黒シャツのデザイナー風の男(刈上げメガネ)が入らないことを少し願いながら歩みを進める。(男は入らなかったので)そのまま一揆じゃない一気に暖簾を右手で払って扉を右に引く。

カウンターとテーブル席二つのオーソドックスな店内。オーソドックスって始めて文字打ったけどなんか変な感じ。なんだオーソドックスって。ずーっと見てるとバンド名みたいに思えてくる。ガレージロック系。パンクほど観念的でなくて革ジャン着てる感じ。きっとボーカルのキャラだけで売ってるんだろう。ギターの感性は幅広くてメタルから映画音楽まで許容する。そのうち解散してボーカルはTVのバラエティーでギターはラディカルな美術館の展覧会なんかで活躍する。熱心なファンはできそうもない再結成を夢に見る。そして俺は。。。ん?いや、ラーメンだった。

俺はカウンターの右端の席に座り、メニューを五秒ぐらい見てから店員のおばちゃんに「中華そば」の情報を放り投げて彼女を安定させる。しかし、中華そば、、900円。え、高くね?俺の金銭感覚がおかしいのか?ちょっとした後悔のちっさい十字架を背中に負いつつボケーっと待つ。周りに食ってる人らがいるけど無視。想像を楽しむことにした。

そして、ラーメン登場。なんか、やわらかい感じ。なんかソフトな感じ。きれいに透き通った琥珀のスープ。チャーシュー二枚(あ、箸でつついたら三枚あった)、ねぎ少々(ほんとに少々、微々たるねぎ)、なんか力強いメンマ。麺は、、細めんか!こうぶつじゃねーか。どれどれ。ズルズルーのmogumogu---。あれ?

これゃ、ソーメンじゃねーか。中華そば?なんか違う。整えられた上品ぶった味だ。丁寧に作りこまれた絹にまとわれたようなスープ。俺は右ストレート打ち込む勢いで暖簾をくぐったのに、相手はグローブもはめずに柔らかそうな無菌の手で俺の頭をなでなでしやがった。違う!カウンターでボディーブローだろ!腹減ってんだよ。くやしい。麺の量が唯一900円の価値を俺に訴えていた。壁に貼られたチラシを見ると、、地鶏がどうの麺に使ってる小麦がどうの、さらには使ってる水がどーのと戯けた情報が入ってきて俺をしらけさせる。始めて神戸を懐かしく思った。もっこす。第一朝日。お前らは俺に渾身のストレートを打ち込んでくれた。ああーくそっ。図書館戻る気も失せた。でも暇だから戻ろう。

つーことで、もうちょい大阪を探索しよう。

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