命の声

 急いで生まれた命の声を聞いたのは、彼に電話をした30分後だった。 愛しい我が子が腕の中で泣いている。
 愛しい我が子が腕の中で泣いている。
 出産予定日よりも3日早かった。朝はそんな気配はなかったのに。

「では赤ちゃんは検査室に」
「お願いします」

 赤ちゃんを看護師さんに手渡す。
 小さな手が握っていた私の人差し指が寂しくなる。
 ようやく授かった命。これから母親としてちゃんとやれるかという不安。
 旦那と協力していけるか。いろんなことが頭をよぎり、心臓の動きが早くなる。
 今だってお母さんに甘えている自分が母親になった。
 責任の重さに潰されてしまいそうになる。

「あかり! 生まれたのか!?」
「諒。うん、可愛い女の子」
「そうか。お疲れ様」
「ありがとう」

 急いできた彼の息は荒い。ネクタイも曲がっている。

「これからは3人だな」
「ちゃんと親になれるかな」
「もう親なんだから、一生懸命やるしかないだろ」
「そうだね」

 諒が頭を撫でてくる。大きくて温かい手。
 彼が父親でよかった。

「あかりがお母さんになってくれてよかった」

 私は頬を赤めて微笑んだ。
 今日も命は回っている。消える命、消えそうな命、生まれる命、燃えるように輝く命。
 今日という太陽に命は焼かれている。

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