「うまく生きていけなくても」

海原に船が出る
乗り込んだら戻れない

乗った船はどこかが違っていた
乗り換えたことがないから分からない

思うように動いてくれなかった
それは雨や光や 波の所為ではなかった

進みたい方向がそこにあったのに
遠ざかっていく……

ありのままの自分なんて言ったの誰
行きたい場所に行けないような船なんて意味がない
これがありのままならそんな姿は見たくない

やり直すなら最初からがいい
違う船に乗っていたかった
そんな後悔は何度しただろう

理由がないのに苦しくて
夜はあまりに暗くて怖くて
手を伸ばしても光に届かなくて

――船が見えた

みんな同じように進んでいるように見えて 焦った
不安になった 逃げだしたくなった

痛みをいくらでも抱えて
そうして景色は変わっていく

光はまっすぐで 風は見えなくて 波は揺らいで

雲は形を変えて 船はみんな違う方へと 進んでいく

どの船も 自分だけの光を探していた

行き先は一つだけではなかった
焦る必要なんてない 諦める必要なんてない

怖かった夜のはずなのに
星が瞬いていたことに ようやく――気づけた
流れ星が消えていけば それはかけがえのない願いになった

みんな違うから みんな同じ
ありのままなんていられない それが現実

壊れたような船で 思うように進めなくても
抱えた願いの通りに 精一杯進んでいく
それが ここに生きている理由になる

ありのままではいられないから
隠した場所で そんな自分が守っているものは
きっと――そんな大切な場所

交差して 交わった手は
そんな秘密を分け合って 受け入れてくれた優しさだった

光は そんな瞬間にあったのかもしれない

希望はいつだってそこにあった
幸せは だから変わらずにここにある

旅は続いていくから
勇気に変わる

©Daichi Ishii Office, LLC.