今年の終わりに 思うこと



 この物語を書き始めてから、すでに4年が経ってしまった。


 もしかしたら僕は、

 本当は、この物語を終わらせたくないのかもしれない。


 僕と松本さんの思い出の物語。


 その思い出は、海の砂ほど無限にあるようで、

 実は全く、有限なのだ。


 決して増える事はない。


 砂時計に詰め込まれた、砂のようなものなのだ。


 物語を書き続ければ、必ず終わりがやってくる。

 真実と向き合わなければいけない時がくる。


 僕はそれが、どうにも悲しい。


 だから僕は、砂粒を一つ一つ落とすように、

 できる限り小さな記憶まで辿りながらも、

 真実が、そのガラス管の片側に完全に姿を現す前に、

 素早く時計をひっくり返し、元のように隠してしまう。


 僕は今、生きている。


 彼女と過ごしたわずかな時間よりも遥かに長い時を、

 他者と共に生きている。


 だからなるべく、過去は忘れようと努めてきた。


 でもそれは、間違っていたのだと思う。


 僕は今、時計の中に、

 砂の替わりに、透明な水を注ぎたいのだ。


 あのキラキラとした思い出を、

 水時計の中にもう一度、くっきりと浮かび上がらせたい。


 だからここに、書き記そうと決めたのだ。


 だからーーー



 ほんの少しでも進めて行こう。





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