書かなかったセリフ ~君と神様に~ (最終ページ)

僕らの世界は

綺麗に咲き誇る花と枯れてしまった花があり

片方だけはありえなくて土の中の種でさえ

何色の花を咲かせるのか誰にも分からない


傷つきたくなくて

始まりから終わる準備をしていては

綺麗に咲き誇る花を見ることは無くて

その花を「かけがえのない」と思うことも無い


最後に渡した手紙は嘘ではないけど

もう夏が来てしまい嘘だと思われても仕方がなくて

バランスを取ろうとして勇気が無かったから

余計なことは考えずに書きたかった

最後だから




また雨が降ってるよ

月曜日は何故雨が降るんだろうね

本当は待っていたあの日から時間は止まったままで

話すことも触れることもできないって

僕にとって不確かで時々不安になるけど

そう思っているのは僕だけで勇気が無かったのも

そのせい


信じることはとても難しいことで

君に出会うまでは信じることに拘りは無かったけど

僕が或る壁を乗り越えたら

怖いという言葉が君から消えると信じていて

君は僕が帰ってくると信じている


口にしたとこが無いから

僕もずっと待っていることを君は知らない

何を?って、今、想像したことが答え

知ってた?怖いと思われたくなくて

同じ田舎にいて難しいことだけど

君を見かけた場所や時間はできるだけ避けて来た


でも、もし君が僕を嫌になったら

受け止められないかもしれないけど

その時はsignを送って、二度と君の前には現れないから

ただ、好きな音楽のように

服をたたむような終わり方はやめようね




神様は悪戯好き

僕のことは知らない振りできなかった

と、嫌なことがある度にそう思うことにしてた


不自然だったと思うけど

その夜の独特な空気は分かったから

また背中を向ける君にがっかりしながらも

知らない振りをした


今は自分のタイミングの悪さを棚に上げて

神様をちょっとだけ恨んでいる

思えば、後姿で君だと分かるくらいに

悲しいくらいに背中ばかり見てきた


悔しくてたまらなかった

梅雨の寝苦しい夜に夢を見た

夢の中だと分かっていても

このタイミングでこんな夢見るのかと

また神様を恨んでしまいそうになる


君が大人達に都会へ連れ戻される日が来て

空港で人に囲まれていた

もちろん僕は近寄ることが許されない

君は大人達に手を引かれて視界から消えそうになる

そのとき君は丸めた紙を僕に投げて

その紙を広げるとこう書いてあった

「迎えに来て」


目が覚めても右手は握ったままで

手のひらには爪の跡が残ってた

悔しかった

でも、もし夢が続いていたら大声で叫んでる

「必ず迎えに行くから」

言いたくて勇気が無くて言えなかったセリフ


覚えてる?まだ言ってくれるかな

あの時は、僕にとって気軽に扱える言葉ではなく

君以外に見せられる言葉ではなかった

今だって、とても勇気がいる




神様、僕らの出会いには感謝してますけど

さんざん悪戯したんだからもういいでしょ

許してくれたって

これからは知らない振りして下さい

手を繋いでいても見ない振りして下さい

僕らみたいに


僕でなかったら

君はもっと楽な道を歩けたかもしれない

前に言っていた運はきっと僕のせいだよ

ごめんね




最後に1つだけ

スケッチブックの1ページ目に描く未来は

晴れた日に嬉しくて涙する僕ら2人の姿だと

君の心を知った日から固く決めている


(完結)

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