俺に触るな、、今、バリ気分ええから

うつむいた視線の先には高さのまばらな草。

若さを失った男の頭頂部のように広がる草地。

雑草どもはタッパのあるやつでも俺の膝下ぎりぎりで成長が止まっているように見える。

太陽の光をさえぎるものはどこにも見つからない。

背後からの爆音。

飛行機が薄く広がった雲に向かって吸い込まれていく。

なぜか俺には人間が乗っているようには思えなかった。




死んだら、死ぬ瞬間には、全てのことがわかるんじゃないか。

その時、俺の両手は宇宙の果てまで伸びて、

全てのことを認識できるんじゃないか。

それが俺の希望だ。


生きているうちには、俺の両腕は短く、自分すら抱きしめられない。

毎夜、アルコールを燃料にして慟哭のダンスを踊らねばならない。

それが俺の絶望だ。


昼間はしらふで、食うために、人と会い、体の震えをごまかして楽しまなくてはならない。

それが俺の憂鬱だ。


世間の中で自分を正当化できずに、居酒屋のカウンターで喋らずに酒をすする。

それが俺の敗北だ。


それら全てを薪にして、反逆の種火として唾を飛ばす。祭壇は燃え上がる。

炎のまわりで軽やかにステップを踏み、立ち上る煙と共に乾いた笑い声を轟かせながら上昇する。


それが俺の勝利だ。




海から風が吹いている。

天と地がはっきり識別できる。

俺は草地に突っ立っている。

爽快な気分。

すがすがしく空虚な、この現実感。

海を隔てた先に街が見える。

あれは蜃気楼だ。

ガスがつくりだした奇妙な模様だ。

ここが、俺が案山子みたいに立っているこの、荒れた草地。

そう、、これが、俺の現実だ。

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