三柱神の日常 一   ぷろろーぐ

                画像著作者Prairiekittin     


三柱神の日常 一

ぷろろーぐ


 果てなくも思える宇宙の彼方から、湧き出た塵が地球を創る。

 真っ赤に溶けた溶岩の海陸地も無い原始の地球

 志を持った魂が何億年もかけ、たった一つの命を創り出した。

 その者の名は神。

 神もまた無から産れた者ではい。

 人が思いも及ばぬ太古に、唯一の目的の為に創り出された。

 この世の総てを神が創りたもうたのではない。

 始神は多くの神々の誕生に立ち会った。

 自然の営みが創造する物の中から、始神は自分に似た者あるいは自然のから無差別に選び、自身を創った魂の願いを伝えた。

 始神行い総ては魂が目的を果たす為。

 魂の願いを伝授されたる万神が目指す地もまた、魂の願いが果たされた地。

 後に人間はこの地をアルカディアと呼んだ。


 宇宙の誕生を知る者はいないとされている。

 誕生以前の空間には何者も存在していなかったからだとしていあるが、間違いである。

 繰り返される宇宙の誕生に、その度引き裂かれる思いで傍観者となってしまった者達を私は知っている。

 十マイナス四十三乗秒絶望の時がこの一瞬で希望に向かって流れを変えた。

 次の瞬間から三十一万年、宇宙は無から光の空間へと変わる。

 数十億年かけ広大な宇宙は銀河を形成しそして太陽が産れた。

 それでもまだ勇敢な魂達は何もできず、滅亡の時までかえされる事のない宇宙の砂時計を眺め続けるしかなかった。

 さらに五億年後、原始の地球が形を現した。 

 そして今から四十億年前、ようやく魂達が働き出した。 

 有らん限りの力を使い無機なる物をぶつけ合い続け遂に魂達は一個の命を創り上げた。

 それを神と呼ぶにはあまりにも未熟で無知だった。

 魂達は万年前までありとあらゆる生命に似せ、己の意志を伝える神を創り続けた。

 時には生命ではない石や山、海や空にまでその意志を語り続けた。

 しかし魂達の力ではこれらに意志を伝えるは出来なかった。

 人に似た猿が産れ、その者達にも魂の志が伝えられた。 

 これもまた願いを叶えてはくれなかった。

 一万年前、己の目的の為総てを司る神として人に似せた者を神の頂きに置くを魂達は決心した。

 宇宙の無限に続く歴史の中にあって僅か万年にも満たない歴史の人類に、魂達は地球の総て宇宙の総てを委ねたのである。

 数億回も起こった宇宙の誕生と消滅。

 人類が犯した罪で引き起こされる宇宙の悲劇に向かい、魂達はもう一度人類を神の代弁者に選んでしまった。

 魂達は宇宙の誕生以前に人であったから今度こそは未来を己が願う地に導いてくれると信じ

 限りなく繰り返される魂の過ち。

 その過ちに後押しされて、人に似た神は地球を死の星へと導く。

 滅んでは産れる地球の守護者としていずれは人類も神の過ち気付く。

 守護者が己でると知った時、滅ぼす者もまた己だと思い知らされる。


 光の中からいでし魂達は意志を継ぎたる神に寄り添い、水辺に集う生を観察している。

 いつか大地を揺るがすに人が神の意志に背いた時、人類総てを滅ぼさんが戒めをこの地に下す為。

 時の流れなど無に等しき魂には、人の生き死になど瞬時の瞬き。

 魂がいとしく思い守りつづける唯一は人にあらず。

 繰り返し絶え間なく命を産み育む地球魂が故郷。

 兆の年のその先で滅び再生する地球をもって魂は永遠の輪廻を見出した。

 人の儚きを憂いる術を魂は忘れてしまった。

 人から苦難を乗り越えて変貌した魂は、数兆年の月日に総ての悲哀を消しやったのだ。

 もはや魂には人への思いなど微塵もない。

 魂の意志を受け継ぐ神の僅かに残された慈悲に頼って人はようやく生き長らえている。

 文明だ科学だと地球の征服者の如き振る舞いに、神と魂は人などこの世にって故郷を汚すばかりの生き物と幾度となく滅びを試みた。

 人が仕分けたる善なる者も悪なる者も神や魂にとってはただの人。いずれ邪悪を産み増やし続ける害獣でしかなかった。

 それでも人間はしぶとく生き残った。

 何万年かの知識を使い神をたばかり魂を踏みつける。

 既に人と魂の和解など、この地球が果てるまでりえぬと思われし時神は魂を宥め人を戒め、今一度道を示した。

 せめて一度なりともこの地の自然が人に勝った息吹を見ようと、幾度も廻る闇から光、光から闇へのその中で、たった一度の地球の為に堪えよと、魂達は数億回もの地球を見て来た。

 それらの希望は、常に人によって押しつぶされた。

 それでも人であった喜びが心の奥底に残っている。

 故郷か人かの選択で魂さえもが迷い苦しむ。

 神は魂の意志を伝えし者。

 魂もまた遙か昔に人の意思を継いだる者。

 怒りが収まれば人を思わぬ者ではない。

 人は見えぬ者の言葉を聞こうとはしない。

 文明科学の落とし子達は、地の願いを聞こうとはしない。

 滅びに向かうその時でさえ己が我のまま地球の命を食い尽くす。

 されど魂は思う

 我も一度は人でった者今一度試みてみようぞきっと人争いの無き世を築く者と信じよう。

 何の隔たりもい世界を創ってくれると信じよう。

 幾度裏切られようとも、いついつかと信じて待とう。 

 他に我らが成せる術はないのだから。

 人に隔てきを求めたとして、それが成らぬのは太古より繰り返されたる己が地球(ほし)の歴史に記されし 

 魂の望を幾億回も裏切りし者達を、許し続けるもこれが最後と構えたる月日のなんと長きか。

 それさえも裏切りの時に比ぶれば、瞬く間の閃きに似たり。

 一瞬に人は知恵を得た。

 道具を造り、そしていがみ合い。

 争い、殺し合い。

 幾度もの繰り返しを魂は見過ごしてきた。

 今に起こったではい。

 何度でも、何度でも争うがいい。

 いつか気付いたるその時こそ、真に望む世界の終焉の為何の力添えを惜しむものではい。

 総てを捧げ華やかに消滅しようぞ。

 人が人として、地球(ほし)が生き、果て、蘇るのならば何ものをも恐れるなどりはせぬ。

 魂達は今度こそ永遠(とわ)を知ったる人の為その強大な力をもって天を裂き世界を揺らすであろう。

 逃げ惑えばいい。

 泣き叫ぶがいい。

 さりとて傷付け合うなかれ。

 共に助け合い共に荒れた地を耕せ。

 いつかまた命の恵みを受けし時、人が人でる為に畜生道を生きて来た先人の罪を掻き消す為に。

 我らも共に歩もうぞ。

 今一度この地球(ほし)が滅び行き新たな旅を始めた時こそ、我らと人の真なる喜びの時。

 今この時共に生き共に土となったとて、我らが魂は永遠なる静寂後に再びこの地舞い戻り、歓喜に浸るに違いない。

 耐え続けようやくに遂げた魂の、そして人の心がいざないし大地。

 おお、アルカディア。

 今こそ我はここに立つ。

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