懐中小話058「雨の中の人」

シトシトと降り続く、秋の長雨。そのしずくの中に、ときおり、小さな人が入っている。雨粒が落下し、はじけ散る寸前に、中の人はヒョイと外へ飛び出して、地面に降り立つ。そして、あたりをキョロキョロと眺めまわし、自分の行くべき場所を見定めたのち、そちらの方へ、スタスタと歩いていくのである。

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