溢れゆく珈琲

点滴を打つように右耳から音楽を入れる
見つめるのは白い天井
それすらも汚れた色で

現実が偽物のようにしか感じられず
わたしには何も反響しない
身体を通り抜けて汚れた壁に跳ね返される

乾いた手で熱いカップを掴む
火傷しそうな温度がわたしを現実に繋ぎとめる
そのまま珈琲を口に注ぐ
口から溢れて垂れていく
飲み込む力もない

悲しいと思えるだけ幸せだ
辛いと思えるだけで幸せだ
それはちゃんと人間をやっている証拠

わたしの「人間」は苦い珈琲に溶けて床に飛び散っている
©CRUNCH MAGAZINE