その一言が、こんなにも私を。

先日より、ある人形劇にハマっている。
いわゆる「西遊記」のその後という設定のパロディものだ。
ありがたい経典を手に入れたはいいものの、諸事情につきおうちに帰ることができなくなってしまった三蔵法師一行が、お釈迦様の経営する喫茶店にてアルバイトをしている、というのが、大前提となる設定だ。
そしてその喫茶店には日ごと、彼らによる「救い」を必要とする悪~い妖怪たちが現れる。
荒ぶる妖怪たちは一行のエース・孫悟空の活躍により苦しみから開放され、悟空たちもまた得度を積む、といった流れで物語が展開していく。

この度、そのシーズン2となるストーリーにおいて、大変に心を掴まれるシーンがあった。
それは第11話、三蔵法師の乗っているお馬さんの、かつての恋人が妖怪となり、教典を奪いに喫茶店に来店するというお話だ。
お馬さんは彼女と想いあってはいたものの、政略結婚により別の女性の家に婿養子に入ってしまった。
それから長い時間が経ち、かつての恋人は独り身のまま、もう一度お馬さんに出会える日を願って連絡を取り続けるうち、悪の親玉の手先となってしまったのだった。
愛と憎しみは裏表とはよく言ったものである。

二頭身のふんわりやわらかそうなおにんぎょうさん。
しかし、演じられる修羅場は本格的だ。
ちょっとちょっとそれどういう設定なのよ、なんてツッコミさえも追いつかない、スマホあり実況生放送ありの大人な展開。
そしてお馬さんのかつての恋人は吐露する。
彼と別れてからの自分の行いと、自身の彼への募り続ける想いを。
そして「最後のプレゼントに」と経典を欲しがり、お馬さんは無抵抗のまま、一度は彼女が経典を手にすることを許すのだが。



『すまない』。



かつての恋人との会話内で四回繰り返されたこの台詞に、私はガツンとヤラれてしまった。

このシリーズ内での設定では、お馬さんは「無気力・ネガティブ・ローテンションな老いぼれ」ということになっている。
都合上、お馬さん役の俳優さんは、どんな台詞のときもほとんど声に抑揚をつけない。
このシーンでもそれは同様だ。
昼ドラ並みのドロドロ展開だというのに、お馬さんの声音は一定のまま、揺らぐところがない。
にもかかわらず、上記の謝罪の四文字からは回を重ねるごとに、お馬さんのかつての恋人に対する、贖罪の思いがにじみ出てくるのである。

一度目は「何度もメールを送り続けた、あなたは気づいていなかったけど」の回答として使われた。
文脈的にも、「あら、ごめん」程度の意味合いだ。
二度目は、経典を手にした彼女に。
初見では、このシーンは単なる「同じ言葉の繰り返し」に過ぎなかった。
(演出としては、背後にかかっていたBGMが止まったりしているので、少なからず不穏な空気の漂いも感じられるのではあるけれど)
展開の読めない中での、二度目の謝罪に破壊力を与えたのはお馬さんの行動であった。
彼はその言葉を告げた直後に、かつての恋人にくちづけをするのである。

お人形同士がちゅっちゅしたところでなんということもない。
……なーんてしれっと言えるような私であれば、そもそもこんな文章をわざわざ書き綴ったりするものか。
この段階でストーリーと声優さんに引き込まれている私はネネちゃん状態である。
目を覆った両手の、指の間からこっそり事の次第を盗み見ているというアレだ。
「ふおおおぉ……!」と、はからずもテンションだだ上がりになってしまった私は、その後の演出と展開に、思いっきり心を鷲掴みにされた。
お馬さんは三度、四度と、「すまない」の言葉を繰り返す。
彼のキスに驚き、経典を取り落として固まってしまう、今も変わらず愛するひとに。
三度目の「すまない」は「さっきのキスで心の傷を開いたこと」。
そして四度目は、今まで辛い思いをさせ続けたこと、すべてに対して。


ずるいよちょっとぉ。
これ、「よい子のみんな」向けの人形劇でしょぉ。


もだえ狂う私をよそに、「もう遅すぎる」と激高する恋人は、お馬さんとテレビの前のよい子に妖怪としての正体をあらわす。
そしてストーリーは大方の予想のとおり、切なくつらい別れに向かって突き進むこととなるのであった。


ここまでお読みくださった方の半分くらいは、未だ作品名及び「お馬さん役」の俳優名が出ていないのは、灰谷の確信犯であると察していらっしゃるのではないだろうか。
長々と勿体をつけてしまい、大変申し訳ない。
遅まきながらご紹介させていただくとしよう。
大泉洋演じる孫悟空を中心とした、喫茶「ゴー・ダイ・ゴー」にて繰り広げられる、口八丁手八丁の妖怪退治活劇。
『モンキーパーマ』にて老いぼれた変態馬・玉龍を演じているのは、北海道では芸人よりも身体を張ったバラエティで人気の演劇ユニット、「TEAM NACS」が一人。
「ヤスケン」の愛称にて親しまれる、HTBキャラクター「onちゃん」の本家スーツアクター。
安田顕(やすだ けん)、その人である。


さて。
今回の更新の目的とするところ。
それはとりもなおさず、「ヤスケンってイイよ!!」という布教と、私自身の萌えの発散に他ならない。
投稿記事より、『モンキーパーマ』及び安田顕という俳優さんに興味を持っていただけたなら、こんなに喜ばしいことはない。
中には「おにんぎょうさんが修羅場でちゅっちゅ、ってなによそれ」と、お思いになる方もいらっしゃるだろう。
どのような作品であるかは、ぜひともその目でお確かめいただきたい。
そして。

どの作品の誰のことだか、言わなくてもおわかりになったそこのあなた。



(・∀・)ニヤリ
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