二十五メートルプールの底には、紺色で塗られた真っ直ぐな線が引かれている。
 コースという決められた枠の中で、ずっと先まで続く線。
 水底にあるその線を見ながら、端から端まで潜水するのが私は好きだった。その線さえ追っていれば、生きていてもいい気がしたから。
 
 線は壁にある直線と交わって十字を作る。それは、水の中を漂う十字架のようだった。
 潜っている時、その十字の真ん中に私はよく手を当てた。そうすると何だか、こんな私でさえ救われる気がする。

 ──昔から、水の中にいると落ち着いた。
 水底から空を見上げながら、延々と続くこの青の中に自分も溶けてしまいたいと、いつだって私は願っている。
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