001 自意識という名の病

何が大病って、この世で一番大きな病気は「自意識」という名の病であるよ。

皆さんは、ケータイが壊れてメールや電話が出来なくなった時、
「ケータイ壊れました、急用の時はDM下さい」
ってTwitterに書こうとして
「……でも『急用なんてあるわけないくせに人気者ぶりやがってナニこいつー』って思われたら、やだなー」
と思って怖くて書けなくて、結局
「……って書いてもケータイ直った時にメールいっぱい来てないかなって
ものすごい期待しちゃうよね」
と、余計なツイートをして茶化してしまう人の気持ちが分かりますか。

「飾る」という行為が無邪気に出来なくて、冷蔵庫に好きなバンドのフライヤー1枚貼るのだって
「なんかちょっと『マイナーなインディーズのバンド好きぶってる私』って感じ出ちゃうかなあ……? でもこのバンド、本当に好きなんだよ、狙ってるわけじゃないんだよ。いやでも、待て、本当に狙ってるわけじゃないのか? なんだかんだ言ってそう思われたいんじゃないの?」

とかひとりでぐるぐる自家発電エネルギー消耗し、
「えいや!」と叫んで隣に
「杉並区 ゴミの日カレンダー」
をペタリと貼ってやっと心の安寧を得る、という、人の気持ちが理解できますか?!

犬や猫を見て「カワイイ!!」と思い、光の速さで愛が脳を巡るより速く「ハッ私は犬や猫を見て『カワイイ!』とか言うキャラじゃない!」という抑制が先回りし、他の女子達が素直にワンチャンをナデナデするのを、「あ~、いいなあ~、私もナデナデしたいな~、でも出遅れちゃったし……クソ……!!」と思いながら歯を食いしばって見つめていないといけない、という、人の、気持ちが、分かりますか?!?!

知ってるの、誰も私のことなんて見てないの。
誰も私のことなんか気にかけてないの。

それでも、自分で勝手に張り巡らせた自分監視システムから逃れられなくて、このまま自分の脳の中だけが誇大化していって頭蓋骨の中で圧死してしまいそう。
もうこいつは病気なんじゃないかしら。
医者行ったら薬もらえるんじゃないかしら。
でも医者なんか行ったら、
「私自意識過剰神経症で薬飲んでるの、ナイーヴでセンシティヴでしょ、私! うふふふ」
と、更に余計な自意識をこじらせてしまうのは目に見えている。

自分なりに治療法を考えたのだけど、もうこれは子供を産むしかないのかなと思っている。聞くところによると、子を産むと憑きものが落ちたようにケロっとして、自意識もいい具合に子供の方へ配分されて、ナリもフリも適度に構わなくなるというじゃないか。

おばさん化、と言うなかれ、私と同世代の、20代の青年でも、そういう、1人くらい子供産んでる女性にこそ、エロスを感じる、という人が、結構いるんだぞ(きっと同世代の自意識過剰な女子といると疲れちゃうんだね)。

あるいはもう逆に、めっちゃめちゃ人気者になることだな。
めっちゃめちゃ人気者になって、それこそ一挙一投足が注目されるようになったら、
今は「自意識の無駄遣い」でしかないこの行為も
「必要なセルフブランディングの一環」として、経費で落ちるわけだからな!

しかし、出産も人気者化も、すぐには無理……。

ああ、この脳味噌に御札のごとく貼りついて私の思考の自由を封印してる自意識をベリッと剥がして、早く解き放たれたい……。

最近の私の唯一の望みは加齢による緩やかな自意識の剥離です。
頬が落ち目が窪み皮膚がたるんで髪がバサバサになっていくのは
本当に恐ろしいことだけど、
ただひとつ、自意識が薄くなっていくことだけは楽しみです。

それでも駄目だったら来世に期待だ。
いや、私ほどの自意識の持ち主だと輪廻すら断られちゃうかもしれないな……
(まるで汚れのこびりついた空容器はリサイクルに回してもらえないように……)、

……いや、そこまで思うことこそ自意識過剰だね……
私だけ輪廻しない特別な存在だって思い込むなんておこがましいよね……。


 ……どうでもイイネ!
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